寺町の音散策

date:1998.9.29

 寺町を散策した。六斗広見にてしばし音を聞いていた。

 このあたりには古い町並みも残っている。表のバス通りからも離れているので、いわゆる道路騒音で埋め尽くされているわけではない。神社や寺にある植え込みや薮からは虫の声が聞こえる。寺に隣接した保育園からは子どもの歓声、先生のホイッスルの音。下駄履きで通り過ぎたおじさん。時折走り抜ける車やバイク。大きなイチョウの木からは銀杏の実が落ちていた。土塀の上の瓦や、境内の小屋のトタン屋根に当たると、「カタッ」と音をたてる。当たったショックで種の部分だけが飛び出しているものもある。

 環境庁の「残したい日本の音風景100選」では、「寺町寺院群の鐘の音」というのが選定されている。土曜日の夕方6時になると地元の鐘音愛好会のメンバーが町内のいくつかの寺で撞いている鐘の音が聞こえるはずだ。

 角には古い床屋さんがあり、ラジオの声がかすかに聞こえる。「シャキシャキシャキ」とよく切れそうな鋏の、リズミカルな音も聞こえてる。

 ついさっきまで止んでいた雨が、また降り出した。

六斗広見の様子
銀杏の実
飛び出して落ちていた銀杏の種の部分
見上げると銀杏の木
かなりの大木だ
古い床屋から漏れ聞こえる音は...


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